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苛つく、好きな場所

 ずいぶん昔にカメラを手にして以来、カメラはコンパクトカメラ、35ミリ一眼レフ、中判カメラと何台も替わりましたが、ずっと、「街の空気感」みたいなものを求めて、存在さえ忘れられたような、誰も目を留めない風景を写真に収めてきました。ところが、数年前にデジタルカメラを手にしてから、少しずつ、僕の中に変化が生まれました。ぬるい、眠気がする風景でなく、もっと生っぽい猥雑な場所に意識が少しずつ向かっていきました.これは、デジタルカメラの持つ、物理的ではない軽さやスピード感がそうさせたのかもしれません。
 しかし、デジタルカメラを通じて見る繁華街は、看板やのぼりが氾濫し、風俗店の下品な店舗が溢れかえる最低、最悪の場所でしたとにかく目立てばいいと、看板に使われる色の主流は赤、黄色で、しかもどの店も二個三個と出すものだから、街が看板の原色に埋め尽くしされ、歩いているだけで苛ついきました。でも、その反面、街全体にみなぎるパワーや勢いに魅了され、また、独特な緊張感のある雰囲気に惹かれていきました。
 
 今回、写真展は、僕が感じた街の空気をそのまま展示し、写真帳は、僕を魅了した街の魅力をすべて盛り込むことを目指しました。
 試みはうまくいったか判りませんが、看板やのぼりが氾濫し、風俗店の下品な店舗が溢れかえる最低、最悪の「苛つく、好きな街」通いはまだまだ続きそうです。